「ロービジョン向けのノートの選択肢を増やしたい」と考えたはいいけれど、何から手を付ければいいのかまったく見当がつきません。
- ノートってそもそもどうやって作るんだろう?
- 印刷会社は個人の依頼でも受けてくれるかな?
- 見やすい罫線の太さや色はどうやって決めようか?
- いったい何にいくらかかるんだろう?
- 制作資金はどうやってねん出しよう?
などなど次から次へと疑問がわいてきます。あれこれ考えたり調べたりしていくうちに、
- こういうノートを必要としてる子はもっといるんじゃないか? せっかく作るならそういう子たちにも使ってもらいたい。全国の盲学校と弱視学級にプレゼントしよう
- ノートは消耗品。小学生なら 6 年間は使い続ける。学年が上がれば欲しいノートも変わっていくはず。たった一度寄贈して終わりじゃなくて継続して届けられるような仕組みを考えよう
- ロービジョンの子の見え方は千差万別。どんなノートが欲しいかは聞いてみないとわからない。それならノートと一緒にアンケートを同封して、ロービジョンの子供たちや保護者の方、先生方の声を聴けるようにしよう
などアイデアが出てきます。するとまた、
- 全国にはいくつの盲学校や弱視学級があるのかな? 何人くらいのロービジョンの子がいるんだろう?
- 印刷会社はどこがいいんだろう? どうやって判断したらいいかな?
- 継続的にノートを届ける仕組みって何? いきなり東急ハンズへ持って行ってもダメだよね?
とたくさんの ? が出てきます。それをまた調べたり考えたり、友人に相談したりしながら1つ1つクリアにしていきます。このあたりになると考えるのが楽しくて毎日ワクワクしていました。
その中でも特に悩んだのは制作資金。
- いくらなら自己資金で出せるかな?
- 友人・知人に出資してもらう?
- 助成金を探す?
などなど考えましたが、クラウドファンディングを使って広く資金募集を行うことにしました。いくつかのサービスのウェブサイトをチェックして比較検討し、「READYFOR? (レディフォー)」を利用することにしました。
READYFOR? を選んだ理由は、2014 年 3 月当時募集していたプロジェクトが東日本大震災の被災地支援や教育、貧困問題など社会貢献の要素が強いものが多く、そうしたプロジェクトがいくつも成功していたので、「READYFOR? には KIMINOTE プロジェクトに関心を持ってもらえそうな人が多いかも」と考えたのと、ほかのサービスと比べて手数料率が低かったからです。
2 週間ほどで企画書を作り、READYFOR? へアイデア申請しました。
募集期間は 60 日間、目標金額は 115 万円です。
まずは「ロービジョン」を知ってもらおう
募集期間中、ほぼ毎日のように Twitter や Facebook でプロジェクトを紹介しました。また制作の進行状況や KIMINOTE への想いなどを「新着情報」としてブログのような形で書いていきました。READYFOR? で資金募集すると、キュレーターと呼ばれる方がさまざまなアドバイスをしてくださいます。「写真をうまく使って視覚的に訴えるといい」「伊敷さんご自身が打ち合わせなどをしている写真があるといいのでは?」などのアドバイスをいただきました。「Story 04 : KIMINOTE のデザイン」で取り上げている表紙や本文のデザインプロセスも書いています。
クラウドファンディングの利用を検討していく中で、これを機にロービジョンの人の暮らしや学校・職場で不便に感じていることなどを広く知ってほしいという思いも出てきました。そこを理解していないと寄付という行動につながりにくいのではないかと。そこでまず「ロービジョンとは?」というところから始めました。Twitter でこのプロジェクトを知った方からは、
- ロービジョンっていう言葉自体を初めて知った。
- ロービジョンの子たちが使える拡大教科書は知っていたけれど、ノートで不便を抱えているなんて思いもよらなかった。
といったコメントをいただきました。
KIMINOTE はロービジョンの子のため「だけ」のノートではない
KIMINOTE は、ロービジョンの子にとって使いやすいノートではありますが、ロービジョンの子のためだけのノートではないと考えています。ノートは消耗品です。小学校で 6 年間、中学校も含めると 9 年間は使い続けます。では、継続して届けるためにはどうしたらいいか? ロービジョン以外の障害のある子にも、あるいは健常の子にも使ってもらえるものにしないといけない。これは企画の段階から強く感じていました。
そこで教育関連のソーシャルイベントへ参加したり、文房具ファンの方々にも KIMINOTE をご紹介しました。
こうして広報活動を進め、多くの方のご協力をいただいて無事に目標金額を達成することができました。本当にありがとうございました。
一方、KIMINOTE のデザインはどう進めたのか? それはまた次回。